仙術
精神・肉体・呼吸・動作の一致によって魔力を制御する、人類独自の魔法体系。
古代武術と現代科学の融合技術として、国家的な研究と応用が進められている。
中華帝國 ― 仙術は人類文明の証明である。
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中華帝国は、大災害によって旧中国政権が崩壊した後、その領域の大部分を再統一して成立した帝政国家である。
異世界殲滅連合軍を構成する主要国の一つであるものの、その思想は他の加盟国とは大きく異なっている。中華帝国は魔法そのものを危険視しているわけではない。
「魔法とは人類が独力で到達した技術体系であり、異世界人だけのものではない」
帝国政府は、自国で発達した魔法体系「仙術」を人類文明による正統な魔法技術と位置づけており、異世界人による魔法を「未熟かつ無秩序な魔法運用」として軽蔑している。
そのため、中華帝国における異世界人排斥は単なる恐怖や憎悪ではなく、「異世界人は人類が完成させようとしている魔法文明に干渉する邪魔者である」という独特の文明観によって正当化されている。
2045年に発生した「大災害」は、中国大陸にも壊滅的な影響を与えた。
世界各地から流入した異世界人、魔獣、未知の植物、魔法災害に加え、大規模な物流網の寸断と通信インフラの崩壊によって中央政府の統治能力は急速に低下した。
各地では地方軍閥、軍部、民族勢力、反政府組織などによる武装蜂起やクーデターが相次ぎ、旧中国政権はこれらを鎮圧することができなくなった。
最終的に中央政府そのものが機能停止し、中国大陸は複数の武装勢力によって分割される混乱状態へと陥った。この時代は後に、「大分裂」と呼ばれることになる。
大分裂の最中、一人の人物が中国大陸に姿を現した。その人物は、「異世界に渡った古代中国皇帝の血統を継ぐ末裔」を自称した。
彼が語るところによれば、遥か昔、中国から異世界へ渡った者たちが存在しており、その末裔たちは異世界において中国文明の文化、思想、武術、信仰を守り続けていたという。
その主張が歴史的事実であるかどうかについては現在でも議論が続いている。しかし、この「皇帝」は高度な統率能力に加え、後に仙術と呼ばれる未知の魔法体系を用いることができた。
彼は各地の武装勢力を次々と降伏させ、あるいは撃破しながら勢力を拡大。混乱していた中国大陸の再統一を進めた。
やがて旧中国政権の崩壊後に存在していた主要勢力のほとんどが皇帝の支配を受け入れ、新国家の成立が宣言される。こうして、「中華帝国」が建国された。
現在の中華帝国において、皇帝は単なる象徴的な存在ではない。国家元首であると同時に、「中華文明と仙術を体現する存在」として非常に強い政治的・宗教的権威を持っている。
皇帝の正統性は血統だけでなく、「人類文明による魔法体系を完成へ導く者」という思想によっても支えられている。
帝国政府は皇帝を、「人類が異世界文明に屈することなく、自らの文明によって魔法へ到達した証明」として宣伝している。
一方、皇帝が本当に古代中国皇帝の血を引いているのか、それとも大災害後の混乱を利用して権力を掌握した異世界人なのかについては、国外の研究者から疑問視する声も多い。
帝国内において、この疑問を公に論じることは事実上禁忌となっている。
中華帝国を特徴づける最大の思想が、人類魔法優越主義である。
帝国政府は、「魔法とは異世界由来の超自然現象ではなく、人類がまだ完全に理解していない自然法則の一つである」と定義している。
したがって異世界人が魔法を使用しているからといって、彼らに魔法についての特別な権利があるわけではない。
中華帝国では、「人類は異世界人との接触以前から、独自に魔法へ到達しつつあった」という歴史観が教育されている。その象徴が仙術である。
帝国内で広く知られている思想の一つに、「華夷魔導論」が存在する。これは古代中国に存在した華夷思想を魔法文明に適用した思想である。
「正しく体系化され、規律と思想によって制御された魔法こそ文明的な魔法である」
帝国政府は中華帝国の仙術を「文明化された魔法」と位置づける。対して異世界人の魔法は、「感情」「血統」「精霊」「神」「本能」などに依存するものが多いため、「原始的魔法」として扱われる。
魔法を使えることと、魔法を理解していることは同じではない。
帝国の宣伝ではしばしばこの主張が用いられる。そのため、中華帝国は異世界人の魔法技術そのものを否定することはない。むしろ積極的に研究・解析し、「誤った部分を人類が修正する」という思想のもとで軍事技術へ転用している。
中華帝国が国家的に研究している魔法技術が、仙術(せんじゅつ)である。仙術は元々、単一の学問として発明されたものではない。
古来より中国で発達していた次の要素が長い年月の中で複雑に組み合わされた結果、偶然魔法現象を発生させる技術として成立した。
つまり人類は、「魔法の存在を知らないまま魔法を使用していた」のである。
大災害後、異世界人の魔法研究が進んだことで、これまで迷信や伝統技能と考えられていた一部の技術が、実際には魔力を利用した現象であることが判明した。
帝国政府はこれらを体系化。軍事・産業・医療・通信などへ応用する国家研究計画を開始した。こうして現代仙術が成立した。
仙術では、精神・肉体・呼吸・動作の一致が重要視される。魔法使いが杖や魔導具を使用するのに対して、仙術士は自分自身の身体を一種の魔導装置として利用する。
例えば拳法の型を行うことで魔力の流れを制御したり、呼吸によって魔力を集中させたりする。
軍事用仙術ではさらに電子制御技術が組み合わされており、兵士の身体状態や魔力反応をセンサーで監視しながら、最適な仙術発動を補助する装備も開発されている。
そのため現代の仙術は、古代武術と現代科学の融合技術という側面を持つ。
中華帝国は公式には、「異世界人から技術を学んでいる」という表現を強く否定している。帝国軍や研究機関が異世界由来の魔導技術を研究する際には、「逆行解析」という言葉を使用する。
「彼らの技術を模倣しているのではなく、未完成な技術を解析し、人類が正しい形へ作り直している」
この思想に基づき、中華帝国では大量の異世界製魔導具や兵器が研究対象となっている。解析された技術は仙術や既存の科学技術と統合され、帝国独自の兵器へ改良される。
中華帝国軍は帝国陸軍・帝国海軍・帝国空軍の三軍から構成される。
各軍では通常の科学技術に加え、仙術および異世界技術を逆行解析して開発された兵器が大量に使用されている。

中華帝国最大規模の軍事組織。歩兵、戦車、自走砲、装甲車などの通常兵器を中心としながら、仙術を使用する兵士が部隊単位で配備されている。
代表的な特殊兵科として、仙術兵が存在する。彼らは中国武術を基礎とした戦闘術と仙術を組み合わせて戦う兵士であり、身体能力強化、衝撃波、防御術、簡易結界などを使用する。
ただし映画のような超人的能力を持つわけではなく、あくまで通常兵士を補助する魔導歩兵として運用されている。

大災害後に再建された海軍。通常の艦艇に加えて、異世界由来の魔力推進技術や魔力防御技術を逆行解析した艦艇を運用している。
帝国政府はこれらについて、「異世界技術を利用した兵器」ではなく、「人類技術によって再構築された魔導艦艇」と公式発表している。

戦闘機、爆撃機、輸送機などを運用する航空戦力。
一部航空機には魔力制御装置が搭載されており、仙術による姿勢制御補助や電子機器への魔力干渉防止機構などが実用化されている。
さらに異世界の飛行魔法や浮遊技術を研究し、航空機技術へ応用する研究も進められている。
中華帝国は2052年、サユースライ社会主義人民連邦、欧州連合などと共に、「異世界殲滅連合軍」設立に参加した。
しかし加盟国間には大きな思想的差が存在する。サユースライ社会主義人民連邦が科学至上主義によって魔法そのものを危険視する傾向を持つのに対し、中華帝国は魔法を積極的に利用している。
そのため両国の研究者や軍人の間では、「魔法を文明の一部として認めるか」という問題を巡って頻繁に対立が発生している。
それでも、「異世界人による政治的・軍事的勢力拡大を阻止する」という目的については一致しているため、軍事同盟は維持されている。
中華帝国と日本帝国の関係は極めて悪い。大災害後の東アジア情勢、領土問題、異世界人政策などを巡り、両国は激しく対立している。
日本帝国が異世界人を登録・管理した上で国内への居住を認めていることについて、中華帝国政府は、「異世界勢力への妥協」として強く批判している。
さらに、日本帝国が東アジアにおける有力な中立国として影響力を拡大していることも、中華帝国にとって重大な懸念となっている。
そのため中華帝国軍は日本周辺において、次の行動を繰り返している。
日本帝国側も領海・領空防衛を強化しており、両国の軍事的緊張は年々高まりつつある。
第一次次元大戦開戦後も日本帝国は中立を宣言しているが、中華帝国は日本を、「潜在的な解放同盟軍協力国」として警戒している。
中華帝国において異世界人は強い監視下に置かれている。帝国政府が最も警戒するのは、異世界人が独自の魔法文化や政治組織を形成することである。
そのため異世界人による次の組織などの設立は厳しく制限される。
特に、「魔法は異世界人固有の文化である」という思想は国家理念そのものへの挑戦と見なされる。
一方で、仙術研究や異世界魔法の解析に協力する異世界人については、帝国研究機関への参加が認められる場合もある。
この点も、単純な異世界人排斥国家とは異なる中華帝国の特徴となっている。
中華帝国では仙術の存在そのものが国家宣伝に利用されている。
「魔法は異世界から与えられたものではない。」
「我々は遥か昔から、その道を歩んでいた。」
「異世界人は魔法を使う。我々は魔法を理解する。」
「仙術は人類文明の証明である。」
帝国政府にとって第一次次元大戦とは単なる領土戦争ではない。それは、「魔法文明の主導権を人類と異世界人のどちらが握るのかを決定する戦争」なのである。
「魔法は彼らのものではない。」
「魔法は既に人類の文明である。」
中華帝国の思想を最も端的に表す言葉として、帝国政府はこの主張を掲げている。
そして異世界人について、「我々が完成させる魔法文明へ口を挟む、時代遅れの異邦人」と位置づけている。
この思想こそが、中華帝国が異世界殲滅連合軍へ参加する最大の理由となっている。